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パブコメ提出しました(水素・アンモニア)

「⽔素・アンモニア政策⼩委員会/脱炭素燃料政策⼩委員会/⽔素保安⼩委員会中間とりまとめ(案)に対する意見公募要領」について、グリーンピープルズパワーの意見を提出しました。

パブコメ期間:12月8日~1月6日
水素・アンモニア政策小委員会/脱炭素燃料政策小委員会/水素保安小委員会中間とりまとめ(案)に対する意見公募要領
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620223036&Mode=0

提出日:2024年1月6日

概要について

この中間取りまとめは「総論」「⽀援の概要」「制度的措置」「保安措置」そして「適切な制度のあり⽅」の5つの章で構成されている。要点は第1章「総論」で全て書かれており、第2章の「⽀援の概要」には具体性がほとんどなく、第3章の「制度的措置」も同様で、第4章の「保安措置」に⾄っては現状規制の解説にとどまり、激毒物であるアンモニアに対してはその解説さえおざなりという印象である。

提出内容の見出し

  • 1、なぜ⽔素・アンモニアを利⽤するのかが何も説明されていない
  • 2、⽔素基本戦略の前に再エネ基本戦略が必要なのではないか
  • 3、⽔素の必要性について論理のすり替えがある
  • 4、低炭素⽔素には経済合理性がない
  • 5、⾼炭素⽔素によるインフラ整備は⾏うべきでない
  • 6、⽔素⾃動⾞は本当に必要なのか
  • 7、抑制された再エネ電気からの⽔素の意味
  • 8、炭素集約度の評価について
  • 9、2030年までに供給開始できるのか
  • 10、価格差に着⽬した⽀援とは
  • 11、ほとんど具体的な措置がない
  • 12、保安措置の記述は唖然とするほど杜撰である
  • 13、アンモニアに⾄っては何もない
  • 14、きちんと規制機関を分けて検討すべき
  • 15、政府が誤ったシグナルを発信することはやめるべき

第1章「総論」について

1、なぜ⽔素・アンモニアを利⽤するのかが何も説明されていない

2050年CNを達成するために、世界では再エネの拡⼤が第⼀番⽬の対策とされていると認識しているが、⽇本ではその拡⼤計画がなく、⽔素・アンモニアやCCSの⽅針が出されている。
⽔素還元製鉄やセメント⼯業などに⽔素が必要であることは理解するが、再エネの電気や熱で対処できないエネルギーが、⽇本全体で必要なエネルギーの何%であるのかをまず割り出すべきではないか。悪戯に必要性だけを主張し、何にどれだけ必要なのかのシナリオがない戦略は早晩破綻するのではないか。

2、⽔素基本戦略の前に再エネ基本戦略が必要なのではないか

2050年CNを達成するために最も必要なのは、⽇本の再エネ拡⼤基本戦略である。何年までにどこでどのような再エネ技術(発電や熱利⽤、交通などとして)を、どれだけ使うのかという計画を⽴てるべきである。その上で、再エネでカバーできない産業や⽣活インフラは何かを割り出し、その補完措置として⽔素やアンモニアを検討すべきである。

3、⽔素の必要性について論理のすり替えがある

1―1では「産業・⺠⽣・運輸部⾨における脱炭素化された電⼒による電化、⽔素、アンモニア、合成メタン、合成燃料を通じた熱利⽤等の脱炭素化の取り組みが必要」と書かれており、いかにも広範囲で⽔素等が使われるかのように書かれている。しかし1−2では、IEAの分析レポートによる2050年の⽔素需要として、「⽔素還元製鉄、⾃家発電、熱といった産業、⾃動⾞やトラックなどの運輸、発電が想定」と書かれている。これは社会の全般ではなく、特定の「産業や⽣活インフラ」において⽔素等が必要になるという意味にとれる。実際には⽔素等の需要はそれほど多くはなく、ほとんどが再エネの電気や熱、交通⼿段でまかなわれる。⽔素がなければ社会が回らないかのような論理のすり替えが⾏われているように感じる。このような論理誘導は産業界に間違ったメッセージを発することになると懸念する。

4、低炭素⽔素には経済合理性がない

⽔素の製造は2つの⽅法がある。電気を使う電解法と化⽯燃料から⽔素を取り出す改質法である。再エネによるグリーン⽔素は電解法になる。改質法は最も安い褐炭を使うことで低価格で⽣産できる。つまり、再エネ電気のコストが⼤幅に安くならなければ、グリーン⽔素(低炭素⽔素)には経済合理性は⽣まれない。製造法そのものが違うのであり、電解法が改質法より安価になるという⾒通しはほぼない。⼀⽅で改質法は化⽯燃料を燃やして⾏うためCO2が発⽣する。⽔素を⼤量に使おうとすればするほど、⼤量にCO2を発⽣させる構図がここにある。

5、⾼炭素⽔素によるインフラ整備は⾏うべきでない

⽔素・アンモニアは価格が⾼く、供給側、需要側とも両睨みでインフラ整備が進まないとの現状が描かれている。そのインフラ整備を強引に進めるための取りまとめという位置付けで、褐炭による低価格⽔素をオーストラリアから輸⼊して使うことが正当化されている。しかし、それがいつまで続くのか、いつ低炭素⽔素に切り替わるかの計画も予測も書かれていない。国内再エネによる低炭素⽔素が⾼価格で市場から受け⼊れられなければ、「⾼炭素⽔素」によるCO2排出の促進が半永続的に続くことになる。そのように⻭⽌めが効かなくなるような政策は危険であり、取るべきではない。まして、そのためにGX債を使うようなことがあれば、まさに本末転倒と⾔わざるを得ない。

6、⽔素⾃動⾞は本当に必要なのか

例えば⽔素⾃動⾞である。確かに⽔しか排出しない、クリーンな技術である。しかし、すでにEV(電気⾃動⾞)の技術は完成されており、⼤量⽣産によりコストも下がる。今は、政策的なEVのためのインフラ整備(電気ステーションの計画的配置)が⾏われないためにEVの爆発的普及がブロックされているという状況にすぎず、数年後には⽔素⾃動⾞は陳腐化した技術になるだろう。それでも技術の多様性という意味で否定はしないが、集中的に国費を注ぎ込んで開発する対象ではない。

7、抑制された再エネ電気からの⽔素の意味

昨今、再エネが普及拡⼤し、全国的に昼の晴天時には電気が余剰となり、再エネの電気が抑制されている。抑制の意味は送電系統からの解列(切り離し)を意味し、発電そのものが⽌まることではない。したがって⼤量の電気が無駄に捨てられており、これで⽔素を作ることが1−3において推奨されている。しかし、そのことを理由に再エネ発電の抑制が正当化されるようなことにならないよう⻭⽌めがかけられる必要がある。そもそも抑制された電気はゼロ円の電気ではない。発電所の拡⼤再⽣産が保証されてこそ、持続可能なエネルギー社会が形成されるのであり、抑制された電気の利⽤に関する補償ルールが確保されるべきである。⽔素等の⽣産は、抑制された再エネの電気にその対価を払って⾏われるという制度化が必要である。

8、炭素集約度の評価について

炭素集約度は「単位当たりの⽔素製造時に発⽣するCO2排出量」とされる。しかし、褐炭から作られるようなグレー⽔素は、さらに⽇本まで海上輸送される。この輸送中のCO2排出量までカウントされるのか、どこにも書いてない。輸送中、あるいは国内での貯蔵中のCO2排出量は、炭素集約度に含まれているのか明確にされるべきである。

第2章「価格差に着⽬した⽀援、拠点⽀援整備の概要」について

9、2030年までに供給開始できるのか

冒頭において「代替技術が少なく転換が困難な、鉄・化学等といった、いわゆるhard-to-abateな産業・⽤途と、こうしたサプライチェーン組成に資する発電等において、変⾰の嚆⽮となる事業計画に対し、価格差に着⽬した⽀援を⾏うことで、パイロットプロジェクトを⽴ち上げていく。」としている。しかも2030年までに供給開始できるもの、事業者⾃らがリスクをとって投資することなどが条件づけられている。「S+3E」の条件では安定性の項で「年間千トンの⽔素等の供給」が必須条件となっている。⽔素1kgから作れる電気を40kWhとして、1千トンでは4000万kWhの電気を作ることになる。国内電⼒需要の0.004%であり、ほんのわずかでエネルギー供給の⼀端を担うものとは⾔えない。しかも純粋な⽔素発電ではなく、⽯炭や天然ガスとの混焼と想定され、結果的にベースとなる化⽯燃料発電を2030年後も主⼒として温存させることになる。これでは費⽤対効果も悪く、なおかつ地球温暖化防⽌の脱炭素には逆⾏するのではないか。

10、価格差に着⽬した⽀援とは

「価格差に着⽬した⽀援」は、「国内製造に関しては、⽔素等の製造に係るコスト、海外製造・海上輸送の場合は、⽔素等の製造・海上輸送に係るコスト(海外案件については、国内への供給分に応じたコスト)を⽀援対象とする。」とされており、海外案件は船の製造まで対象になっていることが読み取れる。最近建造された「すいそふろんてぃあ号」の建造費は600億円という。ただし、1千トンの⽔素を輸⼊するには、このような⽔素輸送船(⼀隻で運べるのは数万トン)が何隻も必要となる。仮に⼗隻として6000億円もかかる。これ以外に⼯場の建設費⽤もかかる。そんなことをするくらいであれば、国内の電解法設備を⽀援し、まさに電気料⾦分を⽀援するなどの措置のほうが安上がりではないか?じきに使えなくなる海外の改質法設備や、それが使えなくなれば役⽬を終える⽔素輸送船に多額の国費を注ぎ込むのは無駄ではないか?

第3章「低炭素⽔素の供給促進に向けた制度的措置」について

11、ほとんど具体的な措置がない

制度的措置として5つの項⽬が⽰されているが、政府としての⽬標を作ることが⽬標というような回りくどいものである。事業者に対して1)取り組みを求め、2)⾃主的な⽬標を定めるよう求め、3)計画策定と公表を求め、4)国による指導・助⾔・勧告・命令ができるようにし、5)国としての⽬標も定め、6)その進展をフォローアップするというような考え⽅が表明されているだけである。

第4章「低炭素⽔素等の供給・利⽤の拡⼤に向けて必要な保安措置」について

12、保安措置の記述は唖然とするほど杜撰である

⽔素保安戦略というものが作られており、それに基づいて新たな制度を作るように書かれている。⽔素は⾼圧ガスであり、⾼圧ガス保安法で、現在でも厳しく取り扱いが規制されている。今回の⽔素基本戦略は、⽔素の取り扱い範囲を拡⼤し、ある意味では⼈々の⽣活と⽔素取り扱い領域を近づけ、より多くの⼈に危険をもたらすかもしれないものである。その割には、詳細な数字もなく、極めて曖昧な形で、⽔素の取り扱い規制を緩和することになりかねないと危惧する。

13、アンモニアに⾄っては何もない

アンモニアは劇物、毒物である。⾼圧ガス保安法では可燃性ガス、毒性ガスとして分類されている。しかし、書かれているのは「今後必要な化学的データの戦略的獲得」を⾏いたいということのみである。そんな状態で、「⽔素等」の中にアンモニアを滑り込ませ、GX債の対象技術して国費を注ぎ込むことなど許されない。

14、きちんと規制機関を分けて検討すべき

⽔素保安⼩委員会は本来、⽔素等の安全確保のための規制を考えるための場所である。⾔うなればブレーキである。ところが今回の「中間取りまとめ」では、アクセルである推進側の⽔素アンモニア政策⼩委員会と脱炭素燃料政策⼩委員会と連名で作成されている。これでは推進のための規制であって、我が国の中で起こりうる災禍を事前に予測し⾷い⽌めるという規制機関の役割は放棄されているように⾒える。改めて独⽴した中間取りまとめなりを作成されることを期待する。

第5章「新たな市場創出・利⽤拡⼤につながる適切な制度の在り⽅」について

15、政府が誤ったシグナルを発信することはやめるべき

「適切な制度の在り⽅」と書かれているが、電⼒、ガス、燃料、産業、運輸の各分野について政府の⼤枠⽅針が⽰されている。そしてその全てが、⽔素・アンモニアにひきずられ誤ったものになっている。電⼒分野では「省エネ法の発電効率規制における脱炭素燃料混焼への配慮措置」が書かれ、⾮効率でも⽔素・アンモニア混焼であれば優遇し、⾮化⽯証書等も発⾏できるという⽅向性と読める。ガス分野では2030年には合成メタン1%注⼊、2050年には90%注⼊で、ガスの100%をカーボンニュートラルするという、コスト度外視の⽅針が書かれている。ガス事業そのものが終焉を迎え、別業種への転換が求められるという現実的な対応はない。燃料分野では、ひたすら合成燃料(e-fuel)⼀押しである。産業分野では第6次エネルギ基本計画の「電化、⽔素化等による⾮化⽯エネルギーの導⼊⽐率向上を促す」とあり、全業種での⽔素化をうたっているように読める。本来は、再エネによるエネルギー転換が困難な業種に絞り、エネルギー転換の道として⽔素等があるというふうに書くべきである。猫も杓⼦も⽔素・アンモニアという書き⽅では産業界は道を誤る。運輸分野では⼤型トラックを燃料電池⾃動⾞とすることが世界の趨勢のように書かれているが、現実には欧⽶では⼤型のEVトラックが商業化された製品として次々売り出されている。燃料電池トラックに勝機はないと思われる。


以上

本件に関するお問合せ:kouhou★greenpeople.co.jp(★を@に変換)

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